冷蔵庫を開けるとワインが冷えていなかった。

冷えているのはシュウェップスのトニックだけだ。

セラーを覗くが、気軽に抜栓できるワインがない。こういうときに小さいセラーは困る。

もう少し大きいセラーを購入するべきだろうか。

それはそれで別の問題が発生する気がする。

なんとかく甘さが欲しくなってスーズをトニック・ウォーターで割ることにした。

スーズは野生リンドウの一種ゲンチアナ・ルデアの根をスピリッツに漬け蒸留し、オレンジやヴァニラ、香草を加えたリキュール。

色は鮮やかな黄色。細かな製法はやレシピは固く秘密とされている。

パブロ・ピカソの愛したリキュールとしても有名だ。

青の時代からピカソを救い出したのはスーズというのが酒飲みの定説となっている。

実際は恋人の存在が大きかったようだが。

独特の苦みと爽やかな甘みがあり、トニックやソーダで割って楽しめる。

シンプルだが夏にもぴったりのカクテル。

スライスレモンを添えれば完璧だ。

有名なエピソードで『君の悲しみに寄り添う』というリンドウの花言葉が取り上げられることが多い。

があえてスルー。なにせ書くのが恥ずかしい。

代わりにピカソの名言を。

『明日に延ばしていいのは、やり残して死んでも構わないことだけ』

つまり飲みたい時に飲むべき、ということだ。

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