試飲販売のため店頭に立っていると、若い女性が一人早足で向かってきた。
「いらっしゃいませ」
「あのぉ、ちょっと教えてほしいんですけどぉ?」
「はい。なにかお探しですか?」
いきなり質問らしい。
「フランスの北の方でぇ、酒でぇ、なんでしたっけぇ?」
「北の産地ですと泡ならシャンパーニュ、白ならアルザスあたりでしょうか?」
「そうじゃなくてぇ。ノルマンディの名産でぇ。酒?」
はずれてしまったらしい。しかしヒントで答えが二つに絞られた。
「カルヴァドスですか?」
「あっ、おしいカンジ?」
「あっ、はい。ではシードルですね。」
シードルは林檎を発酵させて作る酒だ。
フランス北部のノルマンディ地方ではブドウの北限境界を越えるためブドウがうまく育たない。
そのため、名産の林檎を蒸留してお酒を作る。ちなみにシードルを蒸留した酒がカルヴァドスだ。
ブドウに置き換えればワインとブランデーという関係になる。
「そーそれ。正解。そーだ。そーだ、思い出した。ありがとぉ」
僕の肩をバシバシ叩くと、また早足で去っていった。
どうやら単に名前が思い出せなかったらしい。
お客さまもいろいろだ。
という訳でいま目の前にはグラスに入ったシードルとノルマンディのカマンベール。
クイズの正解者には商品が必要だ。
この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます。