先日の記事ではフルボディの定義について書かせてもらった。
余計に混乱した方も多いと思う。
書いていても「わかりにくいなー」、と思いながら書いていた。
その場合は忘れてもらって構わない。
今回はワインには欠かせないものとなってきた樽の話の話でもしよう。
さてここで問題。
「フレンチオーク材を使用した225リットルの新樽はいくらするでしょうか?」
※ ただし輸出用ではなく、熟成用とする
答えは約10万円。
意外とお客様に寄って高かったり安かったりと別れる。
いかがだっただろうか。
225リットルだとフルボトル換算で300本。
一本あたりのコストは樽の原価で333円だ。
これがトロンセやアリエ産のフレンチオークになるともっと高くなる。
アメリカンオークを使用しても5万円程度。
さてこの樽、使う意味はどこにあるのだろうか。
ひとつは緩やかな酸化反応。
木目を通して微量の酸素を供給することで緩やかな酸化反応が行われる。
これによって色素が安定し、同時にタンニンなどの刺激を抑える。
ふたつ目は樽の成分や香りの添加だ。
樽に含まれるヴァニラ香やカテノールやタンニンといったポリフェノール類を成分として溶け込ませる。
実際のところは何が何でも新樽がいいということはない。
ボルドーではセカンドワインなどの熟成には古樽を使ったり、新樽比率を下げたりする。
これは新樽だと香味成分も強く、ワインとのバランスが悪くなるためだ。
ワインの味わいや目指すスタイルによって使い分ける。
もちろん樽を使わないメリットもある。
ステンレスタンクでの醸造では温度管理もしやすく、品質を安定させやすい。
一度に醸造できる量も多いため、コストが安く済む。
ちなみにワインやウイスキーの世界にはマジックカスクやデザイナーズカスクというものが存在する。
これは樽の中でも超が付く高級品だ。
オーク材の産地だけでなく、樹齢や森の斜面の方向。
さらには1インチあたりの年輪の数などを厳密に管理して作成される。
乾燥期間も通常は1ヶ月程度なのに対し、1~2年もの間、天日乾燥される。
自分たちの造る酒の味わいに対し、もっともいい影響を与える樽をデザインするのだ。
ここまでくるともはや超絶的なこだわりだ。
樽はただの木の枠ではない。
こだわり、手間と時間とコストをかけて造られる。
酒は嗜好品だ。
高い酒がイコール美味い酒ではない。
しかし手間暇のかかった酒に低価格なものなど存在しないのだ。
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