今夜はちょっと昔話でも。
特に面白い話でもないので、読み飛ばしていただいて構わない。
今日、仕事場でワインの案内をしていると、お客様に声を掛けられた。
どうやら自宅飲み用のボルドー系のワインを探しているらしい。
丁度、試飲を用意していたので味見をお薦めしてみる。
「お客様の好みからすると、こちらがお口に合うかと思いますよ。どうぞ。」
「いかがですか?予算的にもちょうどいい価格帯かと思いますが…」
と、とあるワインをお薦めするとお客様が不思議そうにしている。
『たしかに美味いけど、なんで私の好みを知ってるの?』
とお客様。
「前にご案内したときに、こういったタイプがお口に合うと仰っていたので…」
『前に案内したときって?』
「半年ほど前にご来店いただいたときですが…」
『えっ!?半年前に会った客を覚えてるの!?』
「まぁ全員ではありませんが、お話をさせていただいた客様ならある程度は覚えています。」
「前回はコチラとコチラとコチラを試飲していただいて、こちらを購入していただいたかと思います。」
そう言うと、そうとうびっくりしたらしい。
が、実は大したことではない。
この業界で働いていれば程度の差はあれ、ある程度みんな覚えているものだ。
同じお客様に毎回好みを伺うのは煩わしいし、前回と同じアイテムをご案内しても意味がない。
それに口に合う、合わないの情報を蓄積することでスムーズに案内できる。
このワインが好みならこの国のこの品種も口に合うだろうと違うアプローチも提案できる。
まぁ気持ちよく買い物していただくための最低限のマナーといったところだろうか。
別段、特別なことでもないのだが、おかげで話も盛り上がり、何本か購入していただいた。
ちょっと得した気分だ。
そういえば昔の勤め先でこんなこともあった。
24,5歳に見受けられる女性のお客様がご来店。
軽くご来店のご挨拶をしてなんとなく様子を伺っていると店内を行ったり来たり。
なんとなく固有の銘柄を探しているような素振りだ。
「何かお探しですか?」
と、声をかける。すると
『えっと…実は去年の母の日にもこちらに来たんですが、そのときに選んでいただいたワインがすごく美味しくて…』
『同じものを今年、父にも贈りたかったんですが、ワインに詳しくないので名前も覚えてなくて、なんとなくの見た目しかわからないんです』
とお客様。
「ありがとうございます。でしたらこちらのワインではないですか?」
「残念ながらヴィンテージは2004年から2005年に切り替わってしまいましたが…」
『あっ!そうです!!これです!!』
「前のヴィンテージよりも葡萄の風味がしっかりしているので、普段ワインを召し上がらない方でも美味しく楽しんでいただけると思いますよ。」
『前回はじめてお店に来たのに、覚えているなんてすごいですね。助かりました。』
『これにします。ラッピングをお願いします。』
「ありがとうございます。希望のワインがご用意できて良かったです。ラッピングいたしますので少々お待ちください。」
ニコニコと嬉しそうににラッピングの手元を見つめるお客様。
自然とラッピングにも気合が入る。
ここまで喜んでいただけると、販売員冥利に尽きる。
それは一本2,000円のワインでも、高級ワインでもまったく変わらない。
正直、一見のお客様で一年以上前になると思い出せるケースは稀だ。
あまり過度に期待されるとちょっと困ってしまう。
我々は超能力者ではない。
ではこのときは何故すぐに思い出せたのか…
ただ単純にこのお客様が私の好みのタイプだっただけの話だ。
くだらない昔話。
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すごいですね。プロですね。
販売員さんの好み、いいですね(笑)
2010年11月1日 12:52 | tama
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>tamaさん
まぁあまり褒められたことではないですね。
記事にしたことをはやくも後悔しています。
ですが、我々も人間ですので…(笑)
おそらく女性スタッフならイケメンのお客様の好みはずっと把握していることでしょう。
もしお客様が好みの女性ばかりだったら超人的な記憶力を発揮する自信はありますね。
2010年11月1日 13:33 | 黒須 慧