今宵の酒は『春霞 桜花純米酒 限定瓶囲い』。
「春霞」を造るのは秋田県の蔵、栗林酒造だ。
仕事先の試飲販売でたまたまご一緒させていただいた。
栗林酒造は秋田県は三郷町の蔵。
岩手県との県境に位置する。
創業は明治7年。
以来130年にわたって良質な日本酒を生み出している。
町には水道網がなく、蛇口を捻ると地下水が出るらしい。
奥羽山脈の雪どけ水が長い年月をかけて湧き出した良質な水だ。
その水質は国土庁から「水の郷」と認定されているほど。
栗林酒造では酒造りに携わる蔵人全員が地元、三郷町の出身だという。
昔から地元の水に慣れ親しみ、その特徴を知り尽くしたベテランばかりだ。
栗林酒造の目指す酒造りは、丁寧に造ること。
そして柔らかで素直な味わいを持つ、透明感のある酒を生み出すことだ。
栗林酒造ではほぼ全量を協会9号酵母で仕込む。
9号酵母は吟醸酒誕生に大きな役割を果たした酵母で、華やかな香りを持つ酒を醸すのに適している。
『春霞』の名が示す通り、香り華やかで繊細。
この桜花純米酒の原料米は美山錦。
貯蔵前の火入れを行わず、瓶詰め後に水から湯銭するように火入れを行う。
手間暇かかるが、繊細な香りが失われない。
量販店に並んでいなくても、美味い酒は多い。
この季節に楽しむ日本酒としてはぴったりだ。
『春霞たなびきにけり 久方の月の桂も花や咲くらむ』
どうせ飲むなら霞がかった晩がいい。
酒が入れば誰の目にも伝説の樹が見えるはずだ。
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