最近になってちょっと危機的に感じていることがある。
我々は仕事柄、お客様に店頭で試飲をしていただき、ワインを案内する。
気に入っていただければ購入に繋がる訳だが、実はそれと並行して大事な仕事がある。
それが『お客様にワインの感想を聞く』ということだ。
例えば「このワインは美味しいけど、普段使いには高い」であるとか、「値段は手ごろだけどちょっと物足りない」であるとか。
こういった情報を整理し、店舗や依頼主であるインポーターに報告するわけだ。
なぜなら店舗によって客層も違い、好まれる味わいや価格帯に違いがあるからだ。
それによって店頭のアイテムを入れ替えたり、店頭のプロモーションを練っていくわけだ。
そして最近、その仕事中にお客様が頻繁におっしゃる言葉がある。
『あんまり味がしない』
特にここ数年は味が濃いワインが好まれる傾向にはあるのだが、それとはちょっと意味合いが違う。
明らかに「風味の感じられる」ワインでも、「味がしない」とおっしゃるお客様がいるのだ。
普段飲んでいるワインを伺うと口をそろえて「安くて濃いワイン」という答えが返ってくる。
私も安くて濃いワインは好きだ。
正直、ワインは嗜好品なのでそれは全然かまわないのだ。
まずいのは「味を感じられない」という事実だ。
例えば、チリの果実味の強いワインを好まれているお客様にボルドーのミディアムボディのワインを試していただくと、「渋すぎる」という感想が聞こえる。
これは普段、極端に果実味の強いワインに偏るために”舌”が果実味に対して著しく鈍感になるからだ。
その結果、ボルドーの持つタンニンだけを敏感に感じてしまうわけだ。
同様にニューワールドの樽熟のシャルドネばかり飲んでいると、ロワールの白ワインなんて酸味しか感じられない。ただ酸っぱいだけだ。
私は好きなものを飲めばいい、とは思っている。
ただ偏りすぎるとそれ以外のワインが楽しめなくなってしまう。
たまにはスタイルの違うワインを楽しんでみるのがいいだろう。
「いろいろ感じられる”舌”」で「一番好きなワイン」を飲めるのが幸せだ。
もう報告書に「味がしないそうです」、とは書きたくない。
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オーストラリアの人はヨーロッパのワインを飲むと同じようなことをいいますね。
コクがない、とかボディがない、とか。
値段的にどうしても割高になりがちということもありますが、薄いというか物足りなく感じてしまうようです。
最近はヨーロッパのワインも少しずつ入ってきてるのですが、まだなじみがないようです。
ちなみにうちの会社ではNZのマルボロの安価なSBが恐ろしいほど売れています。
2011年5月13日 14:22 | 結
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まったくおっしゃる通りですね
そう言われてしまうと、何をおすすめしていいか非常に困ってしまいます・・・
自分はお財布事情もありそんなに高いのを頻繁に飲む機会などあまりないですが、極力自分の好みを押し付けないように満遍なくご案内しているつもりではありますが、
やはり品揃えが偏りがちですが・・・。
嗜好品は難しいなぁとつくづく思いますね
2011年5月13日 15:38 | max-hokkaido
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>結さん
やっぱりそうなんですか?
勉強になります。
”舌の慣れ”というのは我々には怖いですね。
いろいろな味わいを正確に感じ取れるように気をつけねばと再確認しました。
まだオーストラリアなどの自国での生産・消費が多い国ならわかるんです。
ワインは食中酒ですので、自国の食べ物に合う傾向にありますし。
ですが日本での食卓事情を考えると、この傾向はやや危険な方向に進んでいるようで心配です…
私が違うだけで、みんな毎晩赤身のステーキやバターたっぷりのフレンチでも食べてるのかもしれません。
マルボロの安価なソーヴィニヨンなら私も山ほど欲しいです(笑)
日本のこれからの季節には最高の一本になるでしょうね。
2011年5月13日 15:42 | 黒須 慧
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>max-hokkaidoさん
ご無沙汰しております。
いつもぺたありがとうございます。
一番衝撃だったのはアルゼンチンのトロンテスの試飲をご用意した時に「味がしない」と
言われた時ですね。
さらにローヌのヴィオニエも「薄い」とばっさり…
カリフォルニアの樽熟シャルドネでなんとかオッケーをいただきました。
我われが『濃い=上質』という認識を変えるように努力しないといけないのかもしれませんね…
このままでは上質なキャンティなんて見向きもされなくなってしまいそうです。
2011年5月13日 15:48 | 黒須 慧
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ブログいつも楽しみにしています。私もワインが大好きで、特に赤。そのお店の一番のお勧めを聞いた上で、結局、果実味のあるまったり系?ワインを伺って注文します。
ワインに特別詳しい訳ではなく、自分が美味しいと思うワインをいただきます。
でもたまには自己主張を抑えて、お店お勧めのワインをそのままいただくのが嗜好が偏らない秘訣かもしれませんね。
次の更新も楽しみにしています。
2011年5月13日 19:42 | ~泥酔拳ママ~【amore mio】ミオ
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>~泥酔拳ママ~【amore mio】ミオさん
はじめまして。
どうしても好みで選ぶと偏るんですよ。これは仕方がないことですね。
季節によっても体調によっても美味しく感じるものは違うので、いろいろ楽しむのがいいかもしれませんね。
2011年5月13日 22:33 | 黒須 慧
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さらにさらにワインの奥深さを感じました。
2011年5月14日 02:02 | yu-ai
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その味を試すか 好みのみで満足するか…
毎日の行いで似た経験はあると思います
お酒の味は千差万別ひとそれぞれ
究極は 類は友を呼ぶ!
思いと味覚を共鳴できる仲間と知り合えたら
とても幸せでしょうね
飲むものは受け入れる能動的な気持ちを忘れてはいかんのです!
だから ワインも日本酒も焼酎もそしてウイスキーも
すべてが人と菌の文化じゃないですか
乾杯!!!
(ただし長淵の唄ではない)
これからも楽しい記事をお待ちしてます
v( ̄ε ̄)
2011年5月14日 02:59 | Tom Scotta
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>yu-aiさん
お返事が遅くなりました。
日本でもこれだけ多くのアイテムが選べるようになりました。
これはインポーターさんの努力の結果です。
せっかくなら色々楽しんでもらえると嬉しいです。
2011年5月22日 19:39 | 黒須 慧
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>Tom Scottaさん
返信が遅くなりました。
たしかにアルコールは菌がないと話になりませんね。
アルコールと炭酸ガスはしょせん酵母の食べカスです。
そう思うと菌は偉大ですね。
2011年5月22日 19:45 | 黒須 慧